感覚・知覚・認知の意味の違いと種類 神経伝達と脳処理
 

感覚・知覚・認知という言葉は同じ意味のように使われてしまうのですが、医療介護などの分野で言い間違えると、誤った情報共有になる可能性があります。

感覚とは

感覚とは、もっとも単純な要素的刺激を主観的に認める働きのことです。
感覚の仕組みを大きく分けると、刺激を受ける → 体の感覚受容器(センサー)が興奮 → 求心性の感覚神経を通して刺激を認めるという働きです。

感覚の種類

体性感覚

  • 表在感覚
    • 触覚・痛み・温度などの感覚
  • 深部感覚
    • 深部感覚の受容器(センサー)は関節、筋、腱にあります。
    • 振動:覚音叉などの振動を感知する感覚
    • 位置覚:目を瞑った状態で手や足などがどの位置にありどの関節がどの程度曲がっているかの感覚
  • 複合感覚
    • 二点識別覚:皮膚に同時に与えられた2つの刺激を2点として識別
    • 皮膚書字覚:手や背中などに文字を書いて何と書かれたか識別

特殊感覚

嗅覚・味覚・視覚・聴覚・平衡感覚のことで、受容器(センサー)が限られた場所にしか存在しないため特殊感覚という分類をされています。

内臓感覚

内臓感覚はの受容器(センサー)は、平滑筋・心筋・腺・内臓粘膜にある。空腹感・食欲・口渇感・悪心・便意・尿意・性感覚など。

代表的な感覚の伝導路の役割

神経と伝導路

神経はよく電線と例えられます。神経にはインパルス(活動電位、興奮)が通ります。ショートしない性質があり、刺激が処理されるべき場所に送られていき、知覚として認知されます。感覚受容器から脳まで伝える神経には、中枢神経系と末梢神経系とがあります。これらは、いくつかの神経細胞を介して結ばれています。神経細胞から神経細胞への情報の通路を神経伝導路といいます。

神経伝導路には、脳から筋肉などに伝える運動神経系と、感覚受容器から脳に伝える感覚神経系があります。
ここでは、感覚神経系の代表例を紹介します。

感覚神経系の伝導路の例

神経は皮膚の受容器から脊髄に入り、さらに脳まで続いていきます。神経は体の中にたくさんあり、それぞれが役割を担っています。例えば神経が集まっている通り道である脊髄の部分が壊れてしまうことを脊髄損傷と言いますが、医学の進歩でどの神経がどこを通り、どんな役割をしているかなどがわかってきています。どの神経が損傷されたらどんな影響があるのかなども、たくさん存在する神経伝導路を考えていきます。ここではごく一部の伝導路を紹介しています。実際にはもっとたくさんあります。

前脊髄視床路(ぜんせきずいししょうろ)

前脊髄視床路は粗雑な触覚と圧覚に関与する神経伝導路です。

外側脊髄視床路(がいそくせきずいししょうろ)

外側脊髄視床路は、痛覚・温度覚に関与する神経伝導路です。

脊髄小脳路(せきずいしょうのうろ)

脊髄小脳路は、意識されない深部感覚に関与します。筋肉、腱、靱帯(じんたい)、関節包の状態、収縮や伸展の状態を小脳に伝える神経伝導路です。

後索路(こうさくろ)

後索路は、触覚の一部(粗大な触覚)・振動覚などの深部感覚を伝える神経伝導路です。

知覚とは

知覚とは、同じ種類の感覚について、その強さや質の区別、時間的経過などを弁別することです。

認知とは

認知とは、いくつかの知覚を統合して知覚化されたものがどのようなものであるかを弁別する働きのことです。認知という言葉では、過去の経験、概念、記憶などを頼りに判断・弁別する高次な作用を意味します。

刺激から感覚・知覚・認知の意味の違いと脳

人は外部からの刺激を受けると、感覚があるということ受容器が感じ取り、その受容器からの信号を脳で弁別して知覚し、高次な脳の機能で認知するとともに判断・理解します。

刺激
感覚(主に体性感覚野で感覚があるorない)
知覚(主に感覚連合野で質・量・時間の弁別)
認知(高次脳機能と言われる判断・理解)
という関係性になっています。

感覚・知覚・認知の役割と合わせて高次脳機能も考えてみましょう

高次脳機能とは、知覚、記憶、学習、思考、判断などの認知過程と行為の情動を含めた精神(心理)機能を総称です。

人間は他の動物と違い、刺激を受けてただ反射的に何か反応を示すのではなく、記憶や情動を含めて思考や判断をする生物です。この機能は人間特有に高度に発達したため、「高次脳機能」と呼ばれます。これらが障害されて、「○○のしかた」「○○の見分け方」が正常でなくなることを高次脳機能障害と言います。詳しくは以下の記事で。