骨折の治癒過程と骨折部位による骨癒合期間の目安

骨折したときに、全治○週間などと言われることがあります。
その時に医師は、患者の年齢や既往歴・体力・生活習慣、骨折の部位、種類、軟部組織の損傷、合併症などを考慮して治療方針を決めていきます。
この記事では、骨の組織構造骨折の治癒過程と治癒までの期間の目安など、少し専門的で医学的な部分に触れておりますが、実際に受傷したときには医師の指示に従い、ここの情報で自己判断しないようお願いします。

 この記事はあくまで参考記事であり、診断や治療などについての期間や治癒を保証するものではありません。

骨の構造

骨組織の基本構造

骨には、海綿質という固いスポンジ状の部分と、緻密質という骨の表面近くの硬い部分、骨の表面を覆っている骨膜があります。

骨の内部には血管もあり、骨代謝が繰り返されています。
体の他の組織と同じように骨も血管通して栄養が送られており、フォルクマン管(骨の中の横穴)とハバース管(骨の中の縦穴)があり、その中に血管があり栄養などが送られています。

 

骨折の治癒過程の期間の目安

骨折の治癒過程では、血腫形成期、軟仮骨形成期(壊死組織の除去)、骨芽細胞増殖期、硬化期(基質の合成)、改変期(組織の分化)という5つの過程で、骨が再生されていきます。

骨折血腫期 初期仮骨形成期 骨芽細胞増殖期 硬化期 改変期
8~10日 10~25日 20~60日 50~6ヶ月 4~12ヶ月

第1期 骨折血腫期 8~10日

骨折の受傷の初期におこる血腫形成期は、いわゆる「炎症」が起きるときであり、疼痛や腫脹・熱感などを伴いながら以下のような流れで骨折部に血腫を作り、骨形成の準備をします。

  1. 骨膜・骨髄・筋肉・血管が損傷され血腫を作る
  2. 損傷血管が収縮して出血が止まると炎症が起きる
  3. 血腫が組織化
  4. 骨膜肥厚
  5. 血管が多くなる
  6. 細片の骨髄は血液と混じって灰白色の組織に変わる
  7. 凝固した血液は赤色の組織となる
  8. 小骨折片はこれら増殖した組織の中に埋もれる
骨折の受傷の初期におこる血腫形成期

    第2期 軟仮骨形成期(壊死組織の除去)10~25日

    炎症が落ち着いてきたことになると、軟仮骨形成期(壊死組織の除去)の過程に入ります。軟仮骨形成期では、増殖した組織は周囲と明らかに区別し得るようになります。

    1. 白みがかって線維軟骨の硬さになる(初期仮骨)
    2. 壊死した組織が取り除かれていく
    3. 骨膜を通じて骨折端が癒合する

    第3期 骨芽細胞増殖期 20~60日

    骨折により損傷した組織が除去されて、骨膜を通じて骨折端同士が癒合すると、骨芽細胞増殖期に入ります。

    1. 癒合を始めた骨折部に骨芽細胞が集まる
    2. 初期仮骨は縮小する
    3. 骨芽細胞が増殖し全体が骨になる(骨海綿質の性質も持ち始める)

    第4期 硬化期(基質の合成) 50~6ヶ月

    骨折部が癒合し、骨芽細胞が増殖して骨の原型ができると、硬化期(基質の合成)となり、海綿質様だった仮骨が硬い骨へと合成される硬化期となります。

    第5期 改変期(組織の分化) 4~12ヶ月

    硬化した骨は、正常な骨膜に包まれ、骨内の組織も分化され完全な骨となります。

    骨折の骨癒合の過程は、このような5期の過程を経て再生されていきます。

    骨の構造による骨折の癒合の期間

    骨の構造により、骨折した場合の治癒(癒合)までの期間(速度)には差があり、硬い部分である緻密質(緻密骨)の方が骨の組織が完全に修復するまでには時間がかかるといわれています。

    海綿骨の癒合の目安:6週

    緻密骨の癒合の目安:9~18週

    整形外科で参考にされている骨の部位・種類による癒合期間の目安

    ここで紹介しているのは、あくまでも目安です。骨折している場合などの自己判断はせず、医師の指示に従い管理してください。

    骨の部位による癒合期間の目安の一覧表

    治療期間 治療期間
    中手骨  2週間 上腕骨幹部  6週間
    肋骨  3週間 上腕骨頚部  7週間
    鎖骨  4週間 下腿骨・大腿骨  8週間
    前腕骨  3週間 大腿骨頸部  12週間

    骨の位置の確認はこちらの記事で!

    よく使う主要な骨の名前と特徴を紹介しています。

    骨折で重要なのは、骨膜と骨構造の連続、栄養供給、外力のコントロール

    骨折の状態によって手術する場合と保存療法する場合がありますが、骨がくっつくためにはここで紹介したような目安があります。
    このように骨折部位によって差が出るのは、骨への栄養を供給している血管の存在、骨自体の太さ・強さ・弱さなどの要素が影響し合うためです。
    基本的には、骨を包んでいる骨膜という膜が繋がらないと骨はくっつきません。骨も体の一部なので、血液を通して栄養をもらえないと成長や修復ができません。

    骨折で全治○か月、完治の診断は医師が下す

    膜がくっついてから、骨の本体の「仮骨」というものができてきて、レントゲンなどで「骨ができてきてますね」という観察がなされます。
    冒頭で述べたように、医師は年齢や骨折のしかた、受傷部位周辺や全身への影響などにより治療方針を決め、この記事で紹介したような治癒過程のどのあたりなのかを定期的な診察やレントゲン等による所見で確認していきます。

    高齢者に多い骨折・関節炎などの整形外科疾患について知っておこう!

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